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【スロベニア編1】

0.スロベニアってどんな国?

 スロベニアは中央ヨーロッパの国の一つです。以前はユーゴスラビアの一地域でしたが、1991年に独立を宣言し、1992年に各国から国家として承認されました。面積は約2万平方キロメートル(四国とほぼ同じ)で、人口は約200万人です(2018年)。首都はリュブリャナで、通貨はユーロです。主要産業は自動車等輸送機械,電気機器,医薬品など。気候はエリアによりアルプス型、大陸型、地中海型があります。

 バスケットボールの面では、代表は男子は欧州トップレベル。女子はあまり力を入れていない印象。国内リーグは男子は2009年くらいまでは1強時代が続き、その後もう1チームの台頭があり、2010年代中盤以降は混戦模様となっている。女子の国内リーグはここ最近で言うと例えば2010年以降はほぼ特定のクラブが優勝している。

1.異例の合併 〜ツェデビタ・オリンピヤ〜

 ツェデビタ・オリンピヤはリュブリャナのクラブである。2019年にスロベニアのぺトロール・オリンピヤとクロアチアのツェデビタが合併してできたクラブである。リュブリャナにホームアリーナを持つ。隣国とはいえ、他国のクラブ同士が合併してできたというのは珍しい事例と考えられる。ここでは合併前のぺトロール・オリンピヤ側の様子について記す。この章では育成組織について記述する。

 ぺトロール・オリンピヤの育成組織は大きく二つに分かれる。一つはバスケットボールスクールでもう一つはチーム形式のものである。

 バスケットボールスクールは8〜15歳が対象である。このバスケットボールスクールには130人以上が所属しているという。週2回、市内数か所の会場に分かれて練習する。スポーツを専攻する大学生を中心とした若いコーチが指導する。

 育成組織のもう一方であるチーム形式での活動については、育成の柱になると思われるので以下に詳述する。チーム形式の方はU−19、U−17、U−15、U−13、U−11、U−9のカテゴリーがある。全て男子チームである。年度によるが、同じ年代でも複数のチームを設定する場合がある。選手数は一チーム当たり10〜23名程度である。全部で200人以上の子どもが所属していた。

 練習回数はU-9のチームは週3回、U-11のチームは週4回、U―13のチームは週4―5回である。U-14までのチームはハードにはやらないとのことあった。

 ぺトロール・オリンピヤの場合、かなり本格的に練習するのはU-15のチームからである。U-15とそれ以上のチームの練習は一日2回が原則である。ぺトロール・オリンピヤの14歳以上のチームは選ばれた選手で構成されており、スロベニアでもトップレベルなので、このような形なのかもしれない。U−15やU−17などの練習は夜の部は19時30分開始でほぼ固定されていた。午前の部は10〜12時などの練習が多かった。

 写真 ぺトロール・オリンピヤの育成組織の練習の様子(U-19)

 育成組織のチームの試合は、地域のクラブで構成されるリーグ戦が中心である。この試合が活動のベースになる。同じ年代での複数のチームの登録が可能である。つまり例えばU−15のチームが二つ以上、それぞれ別なチームとして公式戦に登録・出場ができるということである。その他に、短期間の国際トーナメントにも時折出場することがある。例えば、2017−18シーズンのぺトロール・オリンピヤのU−19チームはABAジュニアリーグという国際トーナメントに参加していた。国際トーナメントは、大会によって年齢の区切りが違う場合もあるので、試合前はそれに合わせてチームを組み練習している。

 育成組織のチームの練習では複数のカテゴリーのチームが一緒に練習することもある。例えば、U−15のチームとU−17のチームが一緒に練習する、というようなことである。ただ、一緒にと言っても正確には練習の全てではない場合が多い。例えば、個人スキルの練習の部分は一緒に練習し、戦術の練習の部分は16−17歳と14−15歳に分かれて練習するという感じである。ちなみに練習の際、チームとして選手の練習着をそろえておらず各自それぞればらばらのウェアを着て練習していた。

 選手のサイズは、視察時は大きい選手で言えば210cm(18歳)、207cm(19歳)、206cm(17歳)、205cm(17歳)、204cm(18歳)、204cm(14歳)などが所属していた。一方で170cm台と思しき小さい選手も見受けられた。

 この身長に関してジェネラル・マネージャーやクラブスタッフにインタビューを行った。その結果、将来欧州でプロ選手になるということを想定した場合、原則として低くても180cm後半から190cm以上に最終的に到達するであろう選手が理想としては望ましいとのことであった。

 次に育成組織の選手の指導方針についても聞いたところ、上記のような大きな選手であってもポジションを固定せずオールラウンドに指導する方針とのことであった。そして大事なことは「今」上手かどうかではないという。つまり、育成組織での活動を終え、トップチームに入る年齢になった時にどれだけ上手になっているかが重要だとのことであった。選手が10代前半の時からその時期を見据えて指導しているという。

 そしてなんと育成組織のチーム専門のリクルーターがいたのは驚いた。プロ選手ではなく育成組織に入れる選手を勧誘する仕事だという(プロの方は別に担当する人間がいる)。 スロベニア国内はもちろん、セルビアなど他の旧ユーゴスラビア諸国からもスカウトされてきている。コソボの選手もいた。またイギリス出身の選手もおり、あまりバスケットボールが盛んではないと考えられる国もカバーされていることがわかる。さらにアフリカ(例えばカメルーンなど)からも連れてきており、いい選手がいる国は欧州以外もターゲットにしている。

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*ぺトロール・オリンピヤのプロチームの方の記録は別な機会に記したい。

*スロベニア・バスケットボール連盟の複数の幹部への詳細なインタビューの結果は別な機会に記したい。

[動画]ヨーロッパのバスケットボール[スロベニア編1]はこちら↓

[動画]ヨーロッパのバスケットボール[スロベニア編2]はこちら↓

スロベニア編1 スロベニア編2 スロベニア編3 スロベニア編4

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文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]

●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
● 元プロバスケットボールチームコーチ

*このページに関するお問合せ euro@demachi.net

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