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【リトアニア編 1】

0.リトアニアってどんな国?

 リトアニアはバルト三国の一つでその中で一番南にある国である。かつてソ連に編入されていた。面積は約6.5万平方キロメートルで東北6県の面積の合計とほぼ同じくらい。人口は約 280万人(2018年1月)。首都はヴィリニュス。主要産業は石油精製業,食品加工業,木材加工・家具製造業,販売小売業,物流・倉庫業など。通貨はユーロ。沿岸部は西岸海洋性気候で、内陸部は冷帯湿潤(混合林)気候。

 リトアニアでは、ヨーロッパでは珍しくバスケットボールが最も人気のあるスポーツである。男子代表は世界上位レベル。女子代表は近年は苦戦している。国内リーグは男子は上位2クラブが強く、欧州でも上位〜中位レベル。国内リーグ女子は男子に比べると盛り上がりにやや欠けている。

1.首都を象徴するクラブ 〜リータス〜

 リータスはリトアニアの有力クラブである。リトアニアの首都ヴィリニュスに位置する。このクラブにはトップのチームとセカンドチームの二つがある。さらに提携しているペルラスというクラブがあり、そことセカンドチームのスタッフや選手の一部を共有している。トップのチームはリトアニア1部リーグに所属し、ペルラスは国内2部リーグに所属し、セカンドチームは年により国内3-4部リーグに所属していることが多い。

 ここではこのトップのチームに焦点を当てたい。トップのチームは11000席のシーメンスアリーナと2741席のジープ・アリーナをホームゲームの会場にしている。トップチームはジープ・アリーナで練習することが多い。1日に1〜2回練習する。練習スケジュールは、午前の練習は10時30分または11時から12時までで、午後の練習は17時から19時まで、または18時から20時までが多い。疲労や怪我の状況をみて練習をキャンセルするなど機動的に対応している。リトアニア男子一部リーグでは2019年までに5回優勝しており、後述のジャルギリスに次ぐ優勝回数である。またチーム名称に「リータス」が付された1997年以降3位以内に入れなかったシーズンは無く、安定して上位の成績を収めている。近年はユーロリーグまたはユーロカップにも出場している。リトアニア国内リーグの試合は日曜日等が多く、ユーロカップの試合は水曜日が多かった(当時)。

 以下はある日のトップチームの練習の様子である。これはこの日2回目の練習となる。コートでは正式な全体練習開始時間の30分ほど前からすでに多くの選手が体を動かしていた。シューティングでピックアンドロールをイメージしたものやオフボールスクリーンを使ってレシーブする設定のものなどを行っていた。逆側のハーフコートでは一人のアメリカ人の選手はアシスタントコーチの指導のもと個人ドリルを行っていた。その後、何人かの選手がウォークスルーをしてナンバープレーを確認していた。

 写真 リータスのトップチームの練習の様子

 本来の練習開始時間の定刻になった時に一度集合しその後全員でウォークスルーを始めた。ここではホーンズのセットなどが目についた。その後、フルコートでのウォークスルーとなりここでは大きく分けて四つのセットが確認できた。これを15分ほど続けた後ストレッチングを始めた。給水を挟んでシューティングに移った。3人がミドルシュートの距離のところに立ち、シュートを一本打つごとにバックペダルでセンターラインを踏み、また最初の位置に戻ってきてシュート打つ。それぞれ二人ずつのペアになり交互にシュートを打っていく。フリースローと給水の後、フルコートでの3対2を連続していく。センターライン上の2か所にポールを置き、サイドのレーンの両選手は攻め上がる時にそのポールの外側を走るようにさせていた。その次は4対3+1である。このドリルから選手の動きのスピードが急激にアップした。3チームが勝敗によって交代していた。一通り終わったあと最も成績の悪かったチームの選手が腕立て伏せをしていた。

 その次はアウトサイドの四人のオフェンスの選手にそれぞれディフェンスがつき、パスに応じてディフェンスがポジションを変える練習である。プロの選手がまるで高校生のように「ボール」、「ヘルプ」などと大きい声を出していたのが印象に残った。途中からこれはライブの4対4に移行する設定になった。その次は2対2である。センターライン付近から始めていく。ピックアンドロールに対してはスイッチしても良い。

 次はボックスアウトの練習である。オフェンスがアウトサイドに四人立ち、ディフェンスはゴール下からミドルライン上に縦に四人並ぶ。コーチがオフェンスの誰かにパスをするとディフェンスが動き出す。ボールをレシーブした選手がシュートを打ち、ディフェンスはボックスアウトをしつつ、そのリバウンドを争う。その後シューティングとストレッチングをして練習は終了した。この回の練習時間は定刻の開始時間から数えて1時間53分であった。このヘッドコーチの特徴は基本を大切にすることとその日に練習したいことがはっきりしていることであるとの印象を受けた。そのようなタイプのヘッドコーチと思われる。

関連動画はこちら

*サボニス・バスケットボール・センター、マルチルリョーニス・バスケットボールアカデミー、ジャルギリスの視察・調査の内容は別の機会に記したい。

*リトアニア・バスケットボール連盟にて、リトアニアの育成年代のシステム、トップのリーグの仕組み等について、詳細なインタビューを行ったが、これは別な機会に記したい。

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リトアニア編1 リトアニア編2 リトアニア編3

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文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]

●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
● 元プロバスケットボールチームコーチ

twitter@ichiro_demachi

*このページに関するお問合せやお仕事のご依頼はこちらまでお願いします euro@demachi.net

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