ヨーロッパのバスケットボール

欧州バスケの強さを探る

全て現地訪問して視察・調査

　　　欧州強豪国ほぼ網羅

【ロシア編 1】

0.ロシアってどんな国？

　ロシアは面積が約1,700万平方キロメートル（日本の約45倍）という広大な国である。人口は約1億5,000万人である（2017年1月）。首都はモスクワ、主要産業は鉱業（石油，天然ガス，石炭，金，ダイヤモンド等），鉄鋼業，機械工業など。通貨はルーブル。気候はほぼ寒冷気候。

　バスケットボールの面では代表は男女とも世界上位レベル。国内リーグは男子は上位クラブは欧州でも上位～中位であることが多い。上位クラブと下位クラブとの差が比較的大きい印象。女子も上位クラブは欧州トップレベルである。

1.その名はヨーロッパ全土に鳴り響く　～チェスカ・モスクワ～

　チェスカ・モスクワはロシアの首都モスクワにある総合スポーツクラブである。サッカーの部門にはかつて本田圭佑選手が所属していた。バスケットボールの部門はロシアを代表する強豪チームであるだけではなくヨーロッパ全体でもトップレベルのクラブである。

　チェスカ・モスクワにはプロのチームと Uー21チーム、Uー18チームがある。Uー21チームとUー18チームのことをユースチームと呼んでいる。全て男子チームである。ユースチームに関しては給料を払うかどうかは各クラブが決めることになっているが、チェスカ・モスクワでは全員プロ選手として契約して、16歳の選手にも給料を支払っている。このU-21チームとU-18チームをまとめてU-19のチームを作り、新たにセカンドチームを作るという計画もある。

　そこでチェスカ・モスクワのクラブの経営と選手育成の全容を知るべく、副社長のフラエバ・ナターリヤ氏と同じく副社長のユルコフ・ユーリ・ミハイロビッチ氏、U-18チームのヘッドコーチのアレキシィ・ズコフ氏並びにアシスタントコーチのレオニド・スピリン氏にインタビューを行った。

　ユースチームの選手のリクルートに関しては、2週間の合宿に選手を呼んで判断する。また選手はもちろんのこと両親とも面接をする。その際両親の身長や足のサイズも測る。リクルートの際は学校の授業の成績は考慮しない。ユースチームに入部後、学校の成績は下がらないことが多い。ちなみに学校を出たあとプロ選手として最初に契約した際には、その前にいた学校に対して育成料を支払うことになっている。これはロシア国内のルールである。

　　(写真)チェスカ・モスクワのU-18の練習の様子

　プロチームの方の選手の採用についても人格が大事だと考えている。夜にバーでお酒を飲んで騒ぐような選手は採用しない。望ましいのは、個人主義ではなくチームスポーツ向きな選手である。また社交性に富む選手が良い。これまでリクルートに全て成功したわけではなく、たまに失敗したこともある。途中で選手を辞めさせると違約金を支払わなければならない規則があるので最初の採用での見極めが大事である。

　チェスカ・モスクワのユースチームは週に9回練習する。夜が6回で朝は3回である。朝の練習は学校に行ってる子どももいるのでその辺も考慮している。午前中は個人スキルの練習またはウェイト・トレーニング等を行い、夕方は主に戦術練習等を行う。

　月に一度集中的にゲームを行う。そこでは5試合ほど行う。また、重要な試合の前は7～10日ほどの合宿を行う。選手のリクルートは全ロシア国内がターゲットである（旧ソ連時代と違い今はバルト諸国からはリクルートが難しくなった）。毎年8月にトライアウトを行って選手を選考する。シーズン中の選手の入れ替えはたまにではあるが行われることがある。寮は2チーム分ある。二人で一部屋である。食堂もついており、近くに学校もある。朝練があるときは午前11時から学校が始まる。

　ユースチームの目標は大会に勝つことではなく、選手が上のリーグ（プロリーグ）にステップアップしていくことである。だから指導者の評価は子どもが上のリーグに行ったかどうかという点が最も大事なところである。

＊チェスカ・モスクワのユースチームの練習で一番大事と考えていることは何か、や、個人能力を上げるために何を重視しているのか、については次回に記す予定である。

＊副社長の方々にうかがったコーチの採用の基準や評価の仕方については別な機会に記したい。また経営面における、売り上げの内訳や予算の額、ホームゲームの集客率を上げるための工夫やマーケティング等についても別な機会に記したい。